ローグ・アサシン
少しチープな雰囲気は残るが、暴力とアクションシーンを上映時間の許すかぎり詰め込んだアグレッシブな作品。しかも高品質。
とにかく詰め込みすぎ。中国系マフィアと日本のヤクーザー、追う刑事、そして暗躍する謎の暗殺者ローグ、四者が入り乱れて殺しあうので休む暇が無い。よくもここまで戦えたもんだ*1。しかもストーリーはしっかりしているし、テンポも良い。アクション映画としては今年最高位に入るのでは。ジェットリーのカンフーが少なめなのが少し残念だったが、補って余りある内容。
一方、善し悪しは別として、チープさについての原因は明白。日本の扱いが薄いからだ。
まず、白人の刑事が日本語を話せる設定なのだが、何を言ってるか全くわからない。練習してないとかのレベルでは無い*2。細かい部分だが、ディテールで手をぬかれるとゲンナリしてしまう。
そして、デヴォン青木とケインコスギだ*3。もう、二人が出てるだけでチープ。なぜだろうか、ケイン君は結構好きなんだけどなぁ。一緒に出てる石橋稜まで、引きずられてるのがすごい。
だが、このチープさもなんだかこの映画にはマッチしてる気もする。アクションもストーリーも、安っぽい日本ヤクーザーも、交じりあっていい作品になったのかな、と。
そんな感想を知ってか知らずか、エンディングには日本人が歌う勘違いラップ、それはそれは愚にもつかない内容を流されてしまう。
オマエラも同じだろ、メーン。と言われたようで赤面。人のことは言えんよな。
めがね
春の与論島は人も少ないし飯も旨いからいいね、という映画。長めのCMか実験映像に近い。
ゆったりと流れる時間や、美しい自然、素朴だが風味豊かで味のある土地の料理。全編そんな映像しかなく、スローライフ万歳な感じ。
だが、注意すべき点がある。作り手はそれを半分肯定しているが、半分は否定している節がある。
主人公達がやっている事は自然との共生とはかけ離れており、生活感の欠けらもない。働かず、余計な人間もいない、飯は勝手にでてくる。好きなだけ滞在するが夏が来る前に離れるので、観光客であふれるビーチも見ないし、台風も知らない。南の島の良いところだけを体験したいという、エゴの固まりだ。しかも、それを共感できない人間を見下す。驚くほどの自己中心的な内容にしている*1。
つまり、都会の人間が島にいるということは、生活ではなく癒しだ。決して島で暮らさない、違うのだということを匂わせている。その証拠に、メインキャストは皆めがねをかけているが、島民には無い。
まぁ、皮肉でもなんでもなく、本気でそう思ってるかも知れないけど。
*1:逆に、畑を耕し労働や共生を目指す人たちは好意的には描かれてはいない。
プラネット・テラー イン グラインドハウス
タランティーノに続いて公開された、今度はロバートロドリゲスの悪ふざけ映画。
こちらはゾンビ物なのでかなりグロいが、笑いの間口が広い人は必見。こいつらの悪ふざけは質が高すぎる。
基本はゾンビ映画へのオマージュなので、映像はドロドロにグジュグジュでとても気持ち悪い。しかも、恐怖というよりビックリさせる方の映画なので、かなり好き嫌いは分かれると思う。私はこの系統はかなり苦手だ。
だが、笑いの要素は結構日本人好みな内容を盛り込んでいるので我慢して見ることができた。いわゆるスタンダップコメディー的な親父ギャグの進化系ではなく、しっかりと筋道を立てたボケが展開されているので、観ている方も安心して突っ込むことができる。そういう視点で言えば、デス・プルーフの方も以外としっかりしていたように思う*1。
映画を観終わった後、ロドリゲスやタランティーノの悪口を言いながら朝まで飲み明かせそうな、そんなくだらなさを持つバカ映画だ。
ぐりとどるとジャンゴ
先日書いたジャンゴの続きだが、そんなヒドイ作品でもないのになぜかネガティブな内容を記述してしまった。
悩んだ末、ひとつの回答を見つけた。ジャンゴという作品は私の中で、違和感を売りにしたあの不愉快なCMとテイストが似ているのだ。不愉快なあれとは、一見さわやかなモデル風の男女数名が伝わりにくいワードを使い続けながら商品を肯定する、マックグリドルのあれだ。
あれはとにかく腹立たしい。甘じょっぱ系に属するキワモノ寸前の商品*1を何とか買ってもらおうとしているのだろうか、「違和感があるけど格好良さを併せ持つ」映像をつくらんとして、綺麗な男女に関西弁をしゃべらせているのだ。この場合の関西弁の役割は、綺麗な男女の対局にあるのは明らかだ。つまり関西弁と綺麗な顔立ちのとりあわせは違和感があると言いたいのだろう。彼らの気持ちをストレートに言いかえれば、関西の奴らは、皆、不細工でひょうきんなのだ。
これは差別である。吐き気がする。
もっと腹立たしいことに、それは事実にかなり近い。関西には男前はいない。関西人の私が言うからまちがいないだろう、たぶん。
話を戻すと、あのCMは差別的で不愉快なものであり、それに似ているあの映画は、巻き添えで面白さが半減したということだ。
我ながら、論理は破綻していると思うが。
*1:とはいえ、商品自体は否定しない。味はなじまないが、商品としてのアグレッシブさは買えるからだ。