TOKKO-特攻-

 「特攻」を取り扱った誠実なドキュメンタリー。
 英雄でも狂信者でも無い。戦闘機乗りを目指していた少年が、学徒動員で特攻隊員に指名されるという事実を、生き残った本人の言葉で語る。「カミカゼ」が生まれた経緯とそれを取り巻く環境の変化、「特攻隊員」としての思いが分かりやすく整理されていて観やすい。


 やはりこの作品の魅力は、元「特攻隊員」のおっさん達。 英雄として祭り上げられている割にメディアに全く登場しないこの人達の姿は、どこからみても普通の人だ。
 紳士っぽい人、アブラぎった社長、軽口連発のひとなつっこいおっさん。どの人達も死地をくぐってきたとは思わせない*1。そんな普通のおっさん達の口から放たれる、どうしようもないほど悲惨な戦争体験。誰が望んでいるのか全くわからない戦いを背負わされ、前線に出て行かなければならなかった思いを、普通のおっさんが平易な言葉で伝えてくれる。その一言一言を素直に受け取ることができた。


 そして、映画を観終わった後、「特攻」が残した大きな傷跡と少なすぎる戦果に愕然としてしまう。

*1:もちろん、わざと隠しているのだが。なぜ隠しているかは映画を観て欲しい。