魍魎の匣

面白い。よくもあんな長い原作を二時間ちょいにまとめたもんだ。
私はかなり楽しいと思った。が、しかし、楽しめる人間は少ないかも。
この作品は良いところと難しいところが激しい。
厳しいところは、原作とは決定的に違う部分があり、謎の部分をかなり変えていること。
大きく変えているので、原作ファンには許容できない人もいると思う。尺的に難しい部分があり、ある程度の入れ替えや取捨選択は必要だが、私的には有りの範囲だった。
そして、原作ファン以外なら、話が複雑すぎて意味がとれないと思う。登場人物がメインだけで十人程度。サブだとそれ以上なので常人なら無理だ。物語以前に内容が理解できないだろう。

一方、良い部分は多い。
まず、日本ではかなり希有なことに、尋常ではない制作費がかなり有効に働いている。戦後日本の情景や、銀幕屋の空気感、猟奇殺人の陰惨さなど、情景描写のレベルが非常に高い。さらに、キャストの連携も抜群で、多人数ながら適材適所、役割分担が抜群だ。
なにより、部分部分では原作の雰囲気が完璧に再現されている。前作では絵を重視していたが、監督が替わったからか役者が慣れたからか、人間関係が生き生きと描写されている。

この作品では、確かに、無理な部分は多いし、現代の映像技術や話法では限界がある。でも、撮っている人間の愛情が作品には現われている。精一杯原作に近づけつつ、映像として収める事のできる最大の調整をはかっていると思う。現代ではこれが上限だろう。十年後になら超えれるだろうか。
次回作が楽しみになった。多分、次は『絡新婦の理』だろうな。是非、”あの人”は「蒼井優」で。