バベル

映画として非常に良くできていると思う。
罪と神罰、そして救いを四つの物語で描いており、それぞれの物語の発端から収束していくまでが綿密に描かれている。
が、テーマに共感はしなかった。俺はそんなにMじゃないよ・・・、という感じ。


良い所から言えば、各ストーリーの相関は結構練られている*1し、それぞれの物語も嫌いでは無い。どんな善良であっても過ちを犯してしまう”人間”という存在や、神の御業としか思えぬ容赦ない罰。そして神が現れ救いを与える。テーマはとても整合している。


いただけなかったのは、二つ。


一つ目は、テーマが”M”過ぎること。
詳しくは書かないけど、凛子の物語全部とブラピのキスシーンは完全に”M”。それぞれの人物が持つ思いはとても純粋なのに、結局”Mプレイ”にしか見えない。
そして最大の”S”の存在も許容しがたかった。”人間”の些細なミスを重箱の隅をつつくがごとく発見し*2、容赦なく鉄槌を下す。んで、死ぬほど苛めておいて、最後に救い*3を与え、許す。というか、十字架重過ぎないか・・・。


二つ目は、J−POPの代表がタカシ・フジイだったこと。
なんだかんだ言って、これは悔やまれてならなかった。


なので、ある程度映画慣れしていてドMの人にはおすすめできる作品と言えるんじゃないでしょうか。


ネタバレあり*4

*1:私の感じたところですが、21グラムとバベルの手法は、厳密に言えば違っていて、かなりレベルアップしていると思う。前者では「観客に物語の展開を予感させる」手間を省いて、先の展開を切り取ってみせてしまうというコロンブスの卵的に乱暴な方法を用いている。斬新でもあるが分かりにくかった。バベルでは時間軸が違う四つの物語をバラして、それぞれの物語の最初から終わりまでを平行して流している。時間軸が前後しているように錯覚させたいみたいだが、今回のは全部計算。物語が平行に流れるというルールは崩していない。

*2:21グラムでは、『髪の毛一本動いても、神はごらんになっている』とあったが、バベルではその能力が如何なく発揮されている。四つの物語の登場人物はそれぞれ罪を犯しているが、間違い探しと思えるほど小さい。厳しすぎるぞ!、神。

*3:これも間違い探しのように判りにくい。十字架や、天使や、それを象徴する描写が、それぞれの物語にある。

*4:ネタバレあり!! チエコ/凛子の最後の手紙について。何が書いてあったか気になるようなので、私の所見を書いておきます。あれはただの恋文ではないでしょうか。今まで直接的な方法しか取らず、他人を拒絶しながら生きてきたチエコが、全てを投げ出してなお拒絶されるという罰を受け、人間関係を文通からやり直す、という感じ。また、刑事が焼酎をあおっていたのも、手紙を読んだからではなく、罪を受けてイライラしていたからでは。刑事はチエコの誘惑にちょっと負けるという罪を犯したため、知らなくてもいい事を知らされるという罰を受けてます。